CNPプリンス公式作家 ふゆきんぐ先生からクリスマスストーリーが届きました✨

            バナーぽんっさん作

『私立CNP学園 クリスマスツリーと聖夜の奇跡』

 

その日、珍しく生徒会長の蛇神独歩は頭を悩ませていた。机の上には一枚の小さな紙が乗っているだけで、それをただ見つめては何かを真剣に考えている。

 

「どしたのどっぽん、なんかお悩み~?」

 

見かねたリー・ハオランが声を掛けた。

 

「あぁ、ハオラン。来ましたか。この投書を見てください。」

「生徒会のご意見ボックスに入ってた投書だね?えっと、なになに?『生徒会の皆さんへお願いです。クリスマスイベントの時、学園に伝わるクリスマスツリーの伝説を解き明かしてください』、って、そんなのあったっけ?」

「私も定かじゃなかったんですが、調べるとどうもあるらしいんですよ。古い生徒会日誌に記録が残っていました。」

「どんな記録?」

「聖なる夜、心跳ねさせば神木の輝きが満ちるであろう……!」

「うわぁっ!き、き、鬼一!ビックリさせないでくれよ~!」

 

突然ハオランの背後から鬼一太郎がぬっと姿を現すと、霊験あらたかな低い声で言った。

 

「へへっ、どう、ボク怖かった?神々しかった?」

「お、なんだなんだ楽しそうだな!」

「ホーくんおかえり~♪」

「ホーク、お疲れさまでした。クリスマスツリーは調達できましたか?」

「おう!バッチリだぜ!12月になったら立派なもみの木が校庭にどーんと立つ予定だ!じいやの力を借りて良かったぜ!」

 

クリスマスツリーの調達のため席を外していた小鳥遊ホークも戻ってきて、いつもの生徒会の風景になった。

 

「え、ホーくん、まさかとは思うけど、本物の木を植えるつもりじゃないよね……?」

 

鬼一が恐る恐る尋ねた。ホークは基本的に真面目で実直なのだが、どうにもズレている節がある。

どこに植えるつもりなの!?というハオランの問いにも、大真面目な顔で

 

「こう、校庭のど真ん中にどーん!とだな……。」

 

などと答えたので、思わず独歩が溜息を吐いた。

 

「ホーク、それでは校庭が使い物にならなくなりますよ。……手配してしまった木の配置は後でじいやに言って変更しておきます。それよりも問題はこの伝説とやらなんですが、鬼一、どう思いますか?」

「うーん、少なくとも、今この学校に悪い気は感じないんだよね。っていうか、この伝説のご神木ってクリスマスツリーのこと?」

「そのようですね。学園が創設して数年後の、古文書のような生徒会日誌でしたから。この投書を書いた人は一体どこからこんなに古い噂話を聞いたのでしょうね。」

「うわぁ、蘇るクリスマスの亡霊、みたいな!?」

「ハオ、それクリスマスキャロル。」

「クリスマスといえばろうそくだしな!」

「ホーくん、それはキャンドルね……。」

 

こんなすっとぼけた会話から始まったが、かくして生徒会の4人は古い噂話の出どころを探りつつ、クリスマスツリーの設置場所を探し始めたのである。そして、一週間が経過したある日のこと。

 

「大変大変!大変だよ~!」

「どうしました、ハオラン。」

「生徒会主催のクリスマスパーティーで学園の謎が解き明かされる!って『CNP学園新聞』の号外が貼りだされてるんだよぉ!」

 

急いでその場所へと向かってみる。職員室前の廊下には多くの生徒が集まっており、皆一様に天井を見上げていた。

かなり高い位置に、例の新聞が大きく貼りだされている。

 

「お!独歩、来たか。見てくれよ、コレ。」

「随分高いところだよね。脚立でも登らなきゃ貼れないだろうに。」

 

先に現場に到着していたホークと鬼一が不思議そうに言った。

 

「・・・・・・なるほど。そういうことでしたか。」

「なになに?なにが?」

「私たちがやるべきことが分かりました。……ホーク、鬼一、ハオラン、行きますよ。」

「え~?なになに~?」

「独歩さん、なにか掴んだんだね?」

「お、なんだなんだ、何か始まりそうな予感だな!!!」

 

こうして、何かを悟ったらしい独歩の指示の下で皆が動きながら迎えた、クリスマス当日。普段人気のない校舎裏には大きなクリスマスツリーが準備され、それを囲うようにして多くの生徒が集まっていた。

 

「うわぁ……!思った以上に集まったねぇ。」

「おぉ!全校生徒集まってるんじゃないか?」

「他校生も結構来てくれてる!すごいねぇ!嬉しいねぇ!」

「元々クリスマスイベントを楽しみにしていてくださった皆さんだけでなく、『学園の謎』に興味がある方々も集まってくれましたからね。狙い通り、というわけです。」

 

独歩が感心したような様子で言った。

 

「狙い通り、って、独歩さんが仕組んだってこと?」

 

鬼一が突っ込むが、独歩は「いえ、まぁ、それはまた後で。」なんて茶を濁すばかりだ。鬼一が食い下がろうとした時、ハオランがマイクの電源を入れた。

 

「あー、テステス、マイクチェックワンツー!」

「ハオ、ラッパーみたいなマイクチェックするなよぉ。」

「へへっ、ごめんごめん、一回やってみたかったんだよねぇ~♪」

「ったくすぐふざけるんだから……!」

 

仲のいい2年生組のいつもの掛け合いが始まる。

 

「独歩、もうライトつけていいか!?」

「そう早まらんと。パーティー始まってから点灯式するんですから。もう少し待ってください。」

「あ~~~、楽しみでウズウズするぜ!」

 

ホークもいつになく浮足立っているような様子だ。自身で手配したクリスマスツリーの点灯が楽しみなのだろう。

 

「ホーくん、めっちゃ張り切って飾り付けしてたもんねぇ。」

「木のてっぺんまで登って星飾ってたしね。」

「じいやが『準備したクレーンも必要ありませんでしたな、ふぉっふぉっふぉ』と笑ってましたよ。」

「おいおい、そんな褒めるなって。」

「褒めてるっていうか……まぁいいや、独歩さん、そろそろ時間じゃない?」

「そうですね。では、始めましょうか。『私立CNP学園の皆様、生徒会長の蛇が見独歩です。本日は生徒会主催のクリスマスパーティーにお越しいただき、誠にありがとうございます。皆さんの心を跳ねさせるような楽しい時間となりますように。それでは、クリスマスパーティー、開幕です!!!』。」

 

美しい音楽が流れだし、大きなツリーの光がパァッと点灯する。

 

「おぉ~~~!!!」

 

四人もあまりの美しさに思わず息を呑んだ。

 

「これは……見事ですね……!」

「キレーだねぇ!」

「星みたいだ……!」

「思ってた以上に凄いな……!」

「これは、ホークのお手柄ですね。」

「おいおいよせよ、全員で準備がんばったじゃねぇか。」

「へへっ、だよね~!」

「ま、がんばったのはがんばった、かな。」

「そうですね、みんなの努力の成果、ですね。」

 

冷たい風が通り過ぎていく。けれど、その美しさと、これまでの準備が報われたことで、四人の心はとても温かかった。

 

「さて、では始めましょうか。」

 

独歩がツカツカとマイクの方へ向かっていく。それに続いて、ホーク、鬼一、ハオランも少し前に出ると、四人一列になって並んだ。

 

「さて、お集りの皆様。本日は生徒のみなさんから匿名で、『普段は言えない、あの人に伝えたい言葉』を頂いています。私たちが代読しますので、是非心をときめかせてお聴きください。」

 

これが、四人の考えた『心跳ねさす事』である。

普段心に秘めた、『伝えたくても伝えられなかった想い』。それは、きっと本人たちだけでなく、皆の心をときめかせてくれるに違いない。

 

一礼した鬼一が独歩と入れ替わってマイクの前に立った。

 

「大切なあの人たちへ。『今まで本当に本当にありがとう。こんな感謝の言葉じゃ伝えきれないくらい、たくさんの思い出ができたよね。これからの日々もきっと素晴らしいものになる。あの時の選択を後悔しないように、ボクたちは頑張るよ』。」

 

ニコっと晴れやかに笑って、鬼一がマイクから離れる。次に前に出たのはハオランだった。

 

「大切なキミへ。『いつも、たくさんの愛を、応援を、ありがとう。俺たちがキミにどれだけ応えられるか分からないけど、それでも、とにかく前に進んでいくよ。……どうか、これからも側に居て』。」

 

少し、頬を赤らめながら、そっと下がっていくハオラン。入れ替わるホークは、なんだかくすぐったそうな顔をしている。

 

「生んでくれた、あなたへ。『今まで、たくさん苦労とか、心配とかかけて、それでも俺たちを生んで、育ててくれて、ありがとう。俺らはもっともっと大きくなって、いつかきっと、みんなを安心させるような存在になるから。だから、これからも、どうかよろしく』。」

 

最後までどこか少し不器用な物言いになってしまうホークが、頬をポリポリと掻きながら下がっていく。

そして、スッと顔を上げた独歩が前に出た。

 

「一番がんばっている、あなたへ。『ここにくるまで、色々ありましたね。楽しい事だけやない、つらかったこと、苦しかったこと、忘れられへん日々があって、乗り越えて、それでもまだ試練は続くかもしれへん。それでも、あなたが居てくれてはじめて、私たちは走り続けられます。ほんまに、おおきに。』」

 

静かな長い礼だった。ゆっくりと顔を上げる独歩に、皆から惜しみない拍手が送られる。

その後もメッセージは様々に続き、会場は温かな空気に包まれていた。

 

「では最後に、私たちから、いつも生徒会を応援してくださる皆さんへのメッセージを。」

「今度はオレからね~!みんな、いつも応援してくれて、ありがとう。あ、リー・ハオランです!いっぱいいっぱい応援してくれる君たちのことが、だいすきだよ。オレも、君たちのこと応援してる。一緒に、がんばろうね!」

「あぁ~!なんかハオにいっぱい言われた……!えっと、鬼一太郎です。いつも応援してくれる皆さんへ。みんなの気持ちが、いつもボクたちの力になってます。ボクも、みんなの力になれていたらいいな。ありがとう、だいすき。」

「小鳥遊ホークだ!お前たちみんな、大好きだぜ!俺たちは俺たちの力だけでここまで走って来たんじゃない。これからも、みんなで先へ先へ進んでいくぞ!遅れないで着いてきてくれよな!」

「生徒会長の蛇神独歩です。いつもほんまにおおきに。私たちは、皆さんがいるから、もっともっと頑張って走っていけます。これからも、一緒に走り続けてください。私たちも、皆さんと一緒に走っていきます。これからもどうぞよろしゅう。……大好きやで。」

 

クリスマスソングが、ひときわ大きく流れ出す。

こうして、『私立CNP学園クリスマスパーティー』はみんなの心を大きく跳ねさせて幕を閉じた。生徒会としては予想外の集客数だったが、予想通りだった人もいたようだ。

 

「で、結局なんだったの?古い伝説持ち出したり、学園新聞貼りだしたり。」

 

終始腑に落ちない顔をしていた鬼一が独歩に詰め寄った。

 

「あの学園新聞、新聞部が出したやつじゃないよね?」

「え、なんだよ、あの新聞偽造だったのか!?」

 

新聞部に時折顔を出しているハオランが言う。ホークはただただ驚いているようだ。

 

「偽造、というかなんというか。新聞部の顧問、誰かご存じですか?」

「新聞部の顧問~?」

「誰だ?」

「……理事長だ……!そっか、理事長なんだね!?」

 

謎が解けた、と言わんばかりの鬼一に対して、ホークはポカンとしていて、ハオランはどこまでも楽しそうだ。

 

「恐らくですが、今回の件は理事長の発案で間違いないでしょう。新聞を実際に作ったり貼りだしたりしたのは別の先生かもしれませんが。」

「そっか、新聞が貼りだされてた場所、生徒が入れるようになる時間だったら絶対目撃情報出るはずだもんね。」

「そもそも職員室前に生徒が貼り紙をするという時点で無理な話なんですよ。」

「流石独歩!全然気づかなかったぜ……!」

「じゃぁ理事長の狙い通りだったわけだね、このドキドキワクワククリスマスは。」

「そうですね。……最高のクリスマスパーティーができたわけですから、理事長には感謝しかありませんよ。」

 

夜は更けていき、クリスマスツリーの輝きは増していく。儚い聖なる夜は、みんなの想いを抱いて、また明日へと続いていく。明日からの日々もきっと、このツリーのように輝いたものになると信じて。四人は互いに顔を見合わせると、誰からともなく声を揃えて言った。

 

「メリークリスマス!!!」

 

Fin.

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